-麦門冬湯(ばくもんどうとう)-


麦門冬湯(ばくもんどうとう)の効能

麦門冬湯は、痰の少ない強い咳に用いる薬です。体力中等度以下で、強い咳が出て顔が紅潮し、痰が切れにくく嘔吐したり、咽喉(のど)が乾燥して、声が枯れたりする人に用います。咳、気管支炎、ぜんそくなどに応用します。

抗がん剤の副作用で起きる手足のしびれには「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」など、乳がんのホルモン治療や、子宮・卵巣がんの手術で卵巣を取った後に起きるほてりには「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」など、のどや耳下腺がんなどの放射線治療の後遺症で、だえきが出ず、口が渇く症状には「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」などを使います。


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適応される主な症状

  • 気管支炎
  • ぜんそく

配合生薬

配合生薬の効能

麦門冬(ばくもんどう)

麦門冬には鎮咳・抗炎症、抗腫瘍効果が認められています。これらの作用は主成分のステロイドサポニン、オフィオポゴニンによるものです。また、オフィオポゴニンDはIgM抗体の産生を抑制しますので、抗アレルギー作用を有しています。

漢方では、麦門冬は鎮咳去痰薬として処方されます。

半夏(はんげ)

半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。

しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。

鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。

粳米(こうべい)

漢方処方に用いる、うるち米の玄米を「梗米」といいます。漢方の古書には、梗米は元気を増し喉の渇きを止め、血液の循環をよくし、内臓の働きも活発にして、胃腸の働きを補い、筋骨を丈夫にすると記してあります。

梗米の大部分は澱粉質で、栄養としてビタミンA、B1、B2、B6、B12、E、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ガンマーオリザノール、イノシトール、フイチン酸を含んでいます。

米は粥にして、薬の効果を増進するためにも使われます。

大棗(たいそう)

大棗は滋養強壮、健胃消化、鎮痛鎮痙、精神神経用薬として、多くの漢方処方に配合されています。

含有サポニンのジジフスサポニンによる抗ストレス作用があり、アルカロイド成分リシカミンのおよびノルヌシフェリンなどによる睡眠延長作用、多糖体ジジフスアラビナンによる免疫活性などが報告されています。

その他、サイクリックAMP(環状アデノシン一リン酸)があります、サイクリックAMPは脂肪組織を構成する中性脂肪の分解を促します。また、含有成分フルクトピラノサイドには抗アレルギー作用が認められています。

人参(にんじん)

漢方治療において最も繁用される有名生薬の一つで、古くから高貴な万能薬としてよく知られています。漢方では強壮や胃腸衰弱、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振などの改善を目標に幅広く処方されます。

この生薬の特異成分であるダマラン系サポニン(主としてギンセノシドRb、Rg群)は動物実験で、強制運動に対する疲労防止、および疲労回復、抗ストレス作用、ストレス潰瘍防止、免疫活性およびアンチエイジングなどを示し、各種機能の低下を抑制する作用が認められています。

その他、抗炎症、抗悪性腫瘍、肝機能改善作用、血糖降下作用、血中コレステロールおよび中性脂肪の低下作用なども確認されています。また、記憶障害改善(抗痴呆)効果が示唆されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。


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漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


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