-手術用ロボット「ダビンチ」による前立腺がん治療-


手術用ロボット「ダビンチ」による前立腺がん治療

前立腺がん手術

前立腺がんの手術は、尿道の根元を取り巻く前立腺を取り除くだけでなく、尿道をいったん切断した後、膀胱(ぼうこう)とつなぎ直します。高い技術が必要なのは、前立腺が体の奥にある上、多くの血管が集まっていて、出血を起こしやすいからだです。また、前立腺の近くには、勃起(ぼっき)をつかさどる神経や尿漏れを防ぐ「尿道括約筋」があり、傷つけると勃起障害や尿失禁といった合併症が起こります。

開腹手術のほかに、おなかに穴を開け、カメラなどを差し込んで行う腹腔(ふくくう)鏡手術がありますが、狭い骨盤内で画像を見ながら棒状の手術器具を操作するのは難しく、合併症などを防ぐ決め手にはなっていません。


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手術用ロボット「ダビンチ」の特長

東京医大病院(東京都新宿区)では、手術用ロボット「ダビンチ」を使って前立腺を摘出する手術を行っています。「ダビンチの導入で、こうした合併症の危険が著しく軽減しました」と、同病院泌尿器科准教授の吉岡邦彦さんは話します。

ダビンチには4本の腕があり、先端に体の組織を切ったり縫ったりする器具とカメラが取り付けられています。患者のおなかに1センチ程度の穴を数か所開けてこれらの器具を差し込み手術を行います。

執刀医は手術台から離れたところにある箱形の操作装置で、画像を見ながら器具を操作します。

ダビンチの特長の一つはカメラの操作で手術部位を好きな角度から自由に見られることです。しかも立体画像で約10倍に拡大できます。

もう一つの特長が、微細な作業が可能なことです。器具の先端は人の手や指のように自在に動かせる上、執刀医の手の動きは数分の1に縮小されて器具に伝わります。直径1ミリの血管を数ミリの血管と同じ感覚で縫え、血管や神経の適切な処置に威力を発揮します。

同病院の吉岡さんは「ダビンチを2006年に導入し、これまで前立腺がん手術を86件行ましたが、長期間尿漏れが続くような合併症はほとんどありません」と説明します。

日本におけるダビンチ普及の課題

ダビンチを開発した米国では現在、前立腺がん手術の7割がダビンチで行われています。心臓の冠動脈バイパス手術や子宮がんの手術などにも、この手術法が広がっています。

日本でも約10年前に導入されたが、設置している医療機関は一部にとどまっています。1台約2億円と高額な上、手術器具としての承認(薬事法)が得られていないため、保険が適用されないのが一因です。

2008年12月、東京医大病院、九州大学病院、金沢大学病院の3病院が、前立腺がんの手術について、保険適用される医療行為と併用して行える「高度医療」の指定を受けました。しかし、手術費用だけで患者さんは約70万円を自己負担しなければなりません。

吉岡さんは「医師が米国の施設まで出向いて訓練を受けなくてはならないなど、日本で普及するには課題も多いいです」と話します。


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関係医療機関

東京医大病院

藤田保健衛生大学病院

九州大学病院

金沢大学病院


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