-進行性大腸がんの分子標的薬アバスチン -


進行性大腸がんの分子標的薬アバスチン

転移や再発する進行性大腸がん

大腸がんの年間死亡者数は約4万人で、女性はがん死の1位、男性は4位です。早期に発見すれば、手術や内視鏡などでがんを切除でき、ほぼ100%完治します。しかし、患者さんの2、3割は、発見が遅れて肝臓や肺などに転移したり、再発したりして、手術などで完治させるのが難しい「進行性大腸がん」です。その時、選択されるのが複数の抗がん剤による治療です。

治療成績は必ずしも満足できるものではありませんでしたが、2007年4月、これまでの抗がん剤治療よりは効果が高いというデータから、新薬のアバスチンが承認されました。


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分子標的薬アバスチン

がんが作り出す血管内皮増殖因子という物質の働きで、がんに栄養を送るための新しい血管が作られます。この薬は、この物質にくっついて働きを止め、血管ができるのを防ぐなどして、がんを小さくします。分子レベルで働くので、分子標的薬と呼ばれています。

抗がん剤の「5―FU」、その働きを強める「アイソボリン」、比較的新しい抗がん剤の「エルプラット」または「イリノテカン」の計3種類の薬による治療法に、FOLFOX(フォルフォックス)とFOLFIRI(フォルフィリ)(ともに3種類の薬の頭文字による略称)があります。アバスチンは一般的に、この二つの治療法に加える4番目の薬として使われます。

2週間に1度または2度の通院時に、アバスチンを含む三つの薬を2時間~3時間半かけて点滴します。5―FUは携帯型ポンプを使って1日または2日かけて、ゆっくりと体に注入します。

この治療の奏効率(がんの直径が3割以上小さくなる患者の割合)は40~50%です。1990年代まで標準的な治療法だった5―FUとアイソボリンによる治療や、2005年から可能となったFOLFOXだけの治療などに比べて奏効率は高いです。海外の研究では治療後の平均的な生存日数はFOLFOXだけで16か月ほどでしたが、アバスチンを加えると20~21か月に延びました。

1か月の薬剤費だけで約60万円と高額ですが、保険で認められ、多くは高額療養費制度が適応されるので、年収にもよりますが自己負担は月8万円ほどです。

がん研有明病院化学療法科副部長の水沼信之さんは「アメリカの大腸がん治療指針では、アバスチンを含む抗がん剤治療は、手術できない転移または再発した大腸がんに対する標準的な治療になっています」と話しています。日本の治療指針も、アメリカにならって改訂されました。

アバスチン特有の副作用

ただし、アバスチンには一般的な抗がん剤と異なる特有の副作用があるので注意が必要です。血圧が上がったり、胃や腸に穴が開いたり、がん周辺などで出血しやすくなったりするので、

1.心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の既往がある

2.大きな手術を受けて間がない

3.胃かいようがある

4.脳に転移がある

などの患者さんは、医師に相談してください。

アバスチンの使用法に習熟した病院で治療を受けることが望ましいです。例えば、がん治療経験が豊富な「がん診療連携拠点病院」は、国立がんセンターのホームページで調べることができます。

ただし、アバスチンを含む抗がん剤治療で、大腸がんを完治させることはできません。重い副作用の危険性もあるので、慎重に治療法を選んでください。

関係医療機関

がん研有明病院


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関連サイト

国立がんセンターがん情報センター


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