-がんの凍結療法-


がんの凍結療法

凍結療法

カチンカチンに凍らせたバラの花は、軽く触れるだけで粉々に壊れます。これと似た原理をがんの治療に使うのが「凍結療法」です。切除手術に比べ、体への負担が少ない点が特長です。

腎がんと肝がんを対象に、効果や安全性を調べる臨床試験が行われました。その実施施設の東京慈恵医大柏病院の放射線科助教授原田潤太さんは「がんを凍らせて殺す。わかりやすい治療法です」と話します。

治療に使う冷凍装置は洗濯機ほどの大きさ。コードでつながった直径2-3ミリ、長さ20センチほどの金属製の針の先端内部に、高圧ガスを噴出して液化させます、マイナス185度の超低温に、わずか10秒間で冷却できます。

この針を、MRI(磁気共鳴映像法)の画面を見ながら、皮膚から刺し、針ががんに届いたら、10分間凍結します。その後2分間休み、再び10分間ほど凍結させます。

6センチ以内のがんが対象になります。凍結が不十分なら、別の部位から新たに針を刺し同じ操作をします。一度に5本まで刺せます。


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凍結後はがんの増殖が止まる

食べ物を冷凍庫に人れても、解凍すると元の軟らかい状態に戻ります。生きた細胞である卵子や精子、さい帯血も、凍結後に解凍すれば活動を再開します。がん細胞も、溶けたら、元通り増殖を始めるのではないかという疑問があります。

しかし急速かつ超低温がポイントで、これでがん細胞は死に、元に戻りません、、死んだ細胞は時間がたつと体に吸収され、消えます。保存液を使って凍結・解凍する卵子などの場合とは違います。

ほとんどの場合は1泊の入院で済みます。

臨床試験で、治療後にがんが消えたかなどを調べ、医療用具として承認申請します。生存率も今後、検証する必要があります。子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)も治療の対象です。北海道大病院でも同様の臨床試験が行われました。効果が証明されれば、患者にとって朗報となります。

慶応大病院での凍結療法

少し違う方法で、慶応大病院は2002年1月から凍結療法の臨床試験を始めました。一般・消化器外科で、対象は3センチ以内の肝がんです。

がんをマイナス140度まで急速冷凍する点は同じです。違うのは、小さく切開した腹部から内視鏡と超音波診断装置を挿入し、両方の画像を見て治療することです。冷凍後、急速にプラス10度まで温度を上げ、これを2回繰り返します。

肝がんには、がんを電磁波で焼き殺すラジオ波などの治療法がすでにあります。講師の若林剛さんは「ラジオ波では、静脈を傷つけたり、画像が乱れたりする場合があります。この方法はその欠点がなく、微妙な場所の治療に向きそうです」と期待しています。

慈恵医大柏病院と北海道大病院では、すでに臨床試験が終わり、現在は凍結療法は行っていません。一方、慶応大では、肝がん、肺がん、腎がんに対して凍結療法を行っており、肝がんについては120件を超えています。現在、前立腺がんについても準備中です。

前立腺がんの凍結療法

2015年慈恵医大病院(本院)は、前立腺がんを凍らせて壊死えしさせる臨床研究を始めたことを明らかにしました。

同病院によりますと国内初の臨床研究で、今後1年以内に5人程度の患者に行い、安全性や有効性を確かめ、国の先進医療に申請したい考えです。

前立腺は精液の一部を作る臓器で、骨盤内にあります。凍結療法は、患者の肛門付近から細長い特殊な針をがん細胞の近くに数本刺し、凍結用のガスを注入して行います。がん細胞をマイナス40度に冷却して壊死させます。

215年10月に1例目を実施した臨床研究は、最初に放射線治療を行った後、前立腺内にがんが再発した患者さんが対象になります。こうした患者さんには現在、前立腺がんの発症に関わる男性ホルモンの分泌や働きを薬で抑えるホルモン療法が行われています。

しかし、薬を使用し続けると骨粗しょう症や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞といった重い副作用が出る恐れがあります。凍結療法を行う慈恵医大泌尿器科の三木健太講師は「安全性と有効性が確認できれば、ホルモン療法を行わなくて済む患者が増える可能性があり、治療の選択肢が広がる」と説明してます。


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関連医療機関

慈恵医大病院(本院)

東京慈恵医大柏病院

北海道大病院

慶応大病院


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