-骨への転移がん進行を抑制する「ビスフォスフォネート製剤」-


骨への転移がん進行を抑制する「ビスフォスフォネート製剤」

骨への転移がん

骨に転移したがんは、骨をもろくし、痛みや、骨折を引き起こします。脊椎(せきつい)に転移したがんが、脊髄の神経を圧迫し、まひが起こることもあります。

厚生労働省研究班(班長・荒木信人大阪府立成人病センター整形外科部長)の推計では、骨転移に苦しむ患者さんは、年間6~9万人います。乳がんや肺がん、前立腺がんが骨に転移しやすいです。

治療は、薬や手術、放射線を組み合わせます。肺がんなどは、抗がん剤で全身のがんの増殖を抑えるのが、標準的な治療です。乳がんや前立腺がんは、ホルモン療法も行います。

痛みに対しては、モルヒネなどの鎮痛薬を使ったり、放射線治療が行われたりします。1回から数回に分け患部を照射、7、8割の患者で痛みが改善されるといいます。また、まひや骨折の予防も放射線治療の役割です。


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ビスフォスフォネート製剤の「ゾレドロネート(商品名ゾメタ)」

これらに最近、加わったのが、骨のがんの進行を抑制する点滴薬、ビスフォスフォネート製剤です。抗がん剤やホルモン剤のようにがんに働きかけるのではなく、がんが骨で増殖しにくい環境を作ります。飲み薬は骨粗しょう症治療薬として使われています。

2004年に乳がんの骨転移治療薬、2006年4月には、血液がん以外のすべてのがんの骨転移などに、ビスフォスフォネート製剤の「ゾレドロネート(商品名ゾメタ)」が承認されました。ゾレドロネートの点滴は、15分ですみます。

正常な骨は、古い骨を溶かして壊す破骨(はこつ)細胞と、骨を作る骨芽(こつが)細胞がバランス良く働き、新陳代謝を繰り返します。しかし、骨に転移したがんは、そのバランスを崩します。

肺がんや腎臓がんからの転移は、破骨細胞の働きが活性化され、骨が溶け出しスカスカになります。一方、前立腺がんは、骨芽細胞の働きが高まり、異常に骨が作られ、折れやすくなります。乳がんからの転移は両タイプが見られる。

ビスフォスフォネート製剤は、破骨細胞の働きを抑制して骨が溶け出すのを止め、骨芽細胞の働きも正常に戻していくとされます。

「ゾレドロネート(商品名ゾメタ)」の効果

国内の骨転移がある乳がん患者約230人を対象にした比較試験では、ゾメタを1年間投与したグループでその間、痛みがあった患者はほぼ全員で痛みが軽減しました。また、3割が骨折やマヒなど合併症を起こしましたが、投与しなかったグループは5割で発生しました。薬によっては、2割の患者が重い合併症を免れたことになります。

原因不明の副作用として、1万人に7人の比率で、あごの骨の壊死(えし)が報告されています。抜歯後に起こりやすく、その時期は使用を控えてください。

癌研有明病院(東京)癌化学療法センター臨床部副部長の高橋俊二さんは、「痛みや骨折は、著しく生活を妨げます。比較的安全に使える薬なので、症状が出る前から薬を使うことで、1日でも長く普通の生活を過ごせる可能性が高まります」と話しています。


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