-肺がんの治療薬「イレッサ」-


肺がんの治療薬「イレッサ」

肺がんの治療薬「イレッサ」の効果への評価

国際的な臨床試験で延命効果が証明されなかった肺がん治療薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ 製造元・アストラゼネカ)について、厚生労働省の専門家検討会は2005年3月、「東洋人には効果が示唆された」として使用断続を決めました。

「がん細胞を狙い撃ちする」と言われたイレッサは、2002年7月に、大きな期待を集めて日本で承認されました。がんが小さくなるなど効果が現れる患者がいる一方、重い肺炎による副作用死が続出しました。

「夢の新薬」か「危険な薬」か、評価が分かれる中、日本を除く海外28か国・約1700人の患者を対象に行った臨床試験で、製薬会社は2004年12月、イレッサの延命効果が認められなかったことを明らかにしました。

しかし、厚生労働省の検討会はデーターを再分析して、「東洋人に限ると延命効果が示唆される」と結論しました。これを受けて厚生労働省は使用断続を決定して、日本肺癌学会が作った、新たなイレッサ使用指針を参考にする旨、医薬品の添付文章に記載するように、指示しました。

指針は、(1)非小細胞肺がんの一種・腺がん(2)女性(3)非喫煙者(4)日本人または東洋人(5)がんの増殖と関連があるEGFR(上皮因子受容体)の遺伝子に異変がある、これらの患者は薬の効果が得られやすいとして、投与を推奨しています。


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肺がんの治療薬「イレッサ」の使用方法

厚生労働省の使用断続を決定に対し、薬の作用に詳しい医薬品・治療研究会代表の医師、別府宏圀さんは「試験結果から一部だけを抜き出して『東洋人に延命効果』というのは、解析方法として信頼度が低い。そもそも日本人への延命効果は分かっていないのに、日本人なら誰でもが服用できることになり、有効で安全に薬を使用できる患者の絞込みに、なっていない。」と指摘しています。

しかし現時点では、既にこの薬を服用し、効果が表れた患者は、副作用に注意しながら服用を続けてよいと考えられています。毎日1錠を原則として効果がある限り飲み続けます。

重い肺炎の副作用は服用を始めて1か月以内に起きる危険性が高いですが、4か月目に急に発症した例もあります。息切れ、呼吸困難、せき、発熱などの症状が出たら、すぐに主治医に連絡する必要があります。

一方、新たにこの薬を使う場合、判断は簡単ではありません。注目されるのが、薬の効果を予測する遺伝子検査です。

イレッサは、肺がん細胞の表面にあるEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるたんぱく質に作用し、がんの増殖を抑えるとされています。この受容体に遺伝子変異があると、薬が効きやすいとの研究があります。日本人、特に女性や、非小細胞肺がんの一種、腺がんの患者は、遺伝子変異の割合が高いとされています。この検査で事前に効果を判定しようというわけです。ただ、まだ研究段階の検査であるうえ、実施できる病院も限られています。

イレッサと遺伝子検査

東大医科学研究所の教授・中村祐輔さんらは、がん細胞の増殖にかかわる12種類の遺伝子を調べることで、イレッサの効き目を投与前に見分ける方法を開発しました。同研究所付属病院で2004年9月から、この方法で診断する臨床研究を始めました。中村教授は「患者1人1人に合わせて治療法を選ぶことができれば、薬の効果を最大限に生かせる」と話しています。

効果や副作用の仕組み、日本人での延命効果など、この薬には未解明な部分が多です。それを十分に理解した上で治療法を選択してください。


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関係医療機関

東大医科学研究所付属病院


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